2013年5月18日土曜日

「強い」農業とは何か

<安倍首相>農業所得10年で倍増 成長戦略第2弾発表 (毎日新聞) - Yahoo!ニュース


脊髄反射的に書く形になるけど、またこういった形で農業/農村にアメをチラつかせるのか。

まず、農業所得10年で2倍といっても、3層くらいにわけて考える必要があると思う。
ひとつは平地で農地をかなり集約できる農家。国内においてはかなり効率的、大規模にできる農家層。

もうひとつは中山間地域で、農地をあまり集約できない農家層。ヘタするとほ場整備もできない(しないほうがマシ)な地域。

もうひとつは施設野菜や花卉農家かな。


平地農業と中山間地域農業を十把ひとからげに「農業」という枠に入れるから、わけがわからなくなると思いますね。

そして、冒頭の記事に関係するのだけど、ここでいう「農業所得を10年で倍増」っておそらく平地農業的な農家層を想定しているんじゃないかと思います。

農地を集積して生産性を高めるため、各都道府県に農地の中間的な受け皿機関を創設し、民間企業を含めて貸し付ける構想を披露した。

こう書かれているし。

それと、中山間地域で主に兼業で農業を維持している層の農業所得って相当低いと思いますよ。
30~50万/年が感覚的には多いんじゃないかなと思う。
条件が悪いところだと赤字でもやってるところもあります。
「赤字ならやめちまえよ」という指摘もありますが、コメづくりに投入した資金に対して売れた額が下回るというだけで、自分たちの食い扶持は除いていると思うので、一般的にイメージする「赤字」とはちょっと違うんじゃないかな、というふうに感じています。

何が言いたいかというと、政府としては50万の農業所得を10年かけて100万に倍増させよう、なんてことは考えていなくて、どう考えても平地農業や施設野菜・花卉農家などに対する支援を行い、効率化・大規模化・集約化を進める。そして、“農業全体”として10年間で倍増、という見込みなんでしょうね。

そうして、また中山間地域などの条件不利地域は足を引っ張る人たち、集約しないならやめちまえ、専業農家に引き渡せ、という論調になるんじゃないでしょうか。

首相は「若者が希望を持って働きたいと思える『強い農業』をつくり上げる」と表明

強い農業、と一言で言われてもなぁ。

平地農業では農地集積、大規模・効率化によるモノカルチャーを推進、ポートフォリオ的に施設野菜、花卉園芸農家を育成・支援する。
中山間地域ではコメ作りだけでなく、野菜、果樹、花卉など多品種栽培を支援・推進するというのが求められるように思います。

個人的には、中山間地域でこれ以上コメを作り続けるのは、やはりジリ貧な気がするので、農家は自家消費分と直接契約分だけを生産し、その他の農地は野菜や果樹などに切り替えていく、ということができないだろうか。
コメ作りに特化して機械等の投資・整備をしてきてて、ここで切り替えるというのは大きな決断とリスクの受け入れが必要になるので難しいかもだけど、やはりそういう部分も考えていくことは必要だろうと思います。

面積的には圧倒的な中山間地域で多品種栽培、面積では限られるが効率経営ができる平地ではモノカルチャー的経営や花卉・施設園芸ということで、日本全体としてのポートフォリオを構築。

コメ作りにおける中山間地域のシェアはおよそ4割だったと思いますが、日本全体としてはコメは十分な量が生産されているので、これを2割に落としても野菜や果樹、花卉など単価がより高いものに切り替えていくことで何とかならないものでしょうか。

0 件のコメント:

コメントを投稿