まず、住民組織が経営を引き継いだ場合、燃料単価は得てして上がります。それは、仕入れコストが新たにかかるようになったり、従来の経営体が用意していた値引きサービスが適用されなくなったり、などなどです。
そうすると、住民経営GSは、数円高くなっても地域の人に買い続けてもらわなければならない。
さらに、これまで他所でガソリンを入れていたユーザーを獲得していく必要が出てくるわけです。
そんなこと、本当にできるの?
それが大きな疑問になるのですが、その一つの要は、住民経営の経営陣だけでなく、そこに住まう人々にどれくらい当事者意識を持ってもらえるようにするか。
先行して住民経営に取り組んでいるいくつかの事例では、そのひとつの解答として、「住民出資」に取り組んでいます。
有名な川根振興協議会(広島県安芸高田市)の「油屋」「万屋」も、大宮産業(高知県四万十市)もそうです。
これら地域では、住民経営になった後も売上は減らず、維持や上昇したりしているようです。
「自分たちの会社、自分たちのガソリンスタンドなんだから、自分たちが使わなければ」
そういう意識が働き、使ってもらえるのでしょう。
経営を引き継いだ時、その後の経営を続けていくためには、住民自身が出資(額の多寡は問わず)してでも続けてほしい、という意識がなければ厳しいでしょう。
では、住民サイドの意識が高まればそれでいいのか、というとそうではないのですね。
もう少し正確に言えば、住民の意識どうこう言う前に、引き継ぐかどうかを判断する経営陣の意識がどうか、がきわめて重要であると思います。
住民に買い支えてもらう、住民の中から新たな顧客を生み出していく。
その第一歩が、住民出資を募ることだと思うのですが、これには想像を超える心身の負担があると思います。
- なぜ経営を引き継ぐのか
- なぜ住民にまで出資を求めるのか
- 出資した金は払戻したり、保証されるのか
そして、出資を募る以上、一箇所に集まっての説明会もですが、戸別に歩いて説明と協力依頼が求められます。
戸別に説明に上がる、その労を厭えば、「本気で引き継ぐ気があるのか?」と疑う人も出てくるでしょう。
本来なら「引き継がなければ」と思うだけでもすごいことなのですが、得てしてこうした問題のすり替えというか、他人事のような意識は働きます。これはもう仕方ありません。そういう人たちにも、丁寧に対応していくことが必要なのです。
そうした心身の負担に耐えて説明し、理解と協力を得る取り組みを忍耐強くできるのか。
そういう意味で、経営陣(候補)の意識がきわめて重要であると考えるわけです。
川根も大宮産業も、その他の先行して住民組織で経営に取り組んでいる地域には、そのような問題意識と負担を乗り越えた人びとがいるんですね。
それがかけがえのない経営資産であるし、今後10~20年後を考えると次の人材が育っているのか?という不安も感じざるを得ないですね。
大宮産業には若い次世代候補がいらっしゃるようです。
ガソリン難民ではなく、買い物難民の話ですが、下で紹介している本は参考にしています。
杉田 聡
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